職場における 熱中症予防対策

5熱中症予防のための作業管理

(1)作業時間

WBGTが高い職場ほど、許容できる連続作業時間は短くなり作業強度を下げる必要が生じ、体温回復に必要な休憩時間を長くする必要があります(図7)。作業の身体負荷と連続時間を減らすよう工夫し、なるべく1時間ごとに5~10分程度の休憩を入れるます。特に、作業開始後4~7日間は作業量を抑えた工程とし、頻繁に休憩させ、複数の者で作業を分担させます。ただし、実際には、温熱環境や作業条件は刻々と変化し、理論的に許容作業時間を求めるのは難しく、経験のある作業者による現場での判断のほうが的確なことが多いのが実態です。

WBGT及び身体負荷の強さと許容される連続作業時間と必要な休憩時間の関係
図7 WBGT及び身体負荷の強さと許容される連続作業時間と必要な休憩時間の関係

(2)休憩室

休憩室には、エアコンをかけ、扇風機、飲料、冷水機、冷蔵庫、長いす、タオル等を用意します。体温計を共用する場合はスプレー式の消毒液等も用意します。職場には冷水ポットやジャグ(携帯保冷容器)を備え、休憩場所には冷蔵庫、長いす、タオルを備えます。体温計を共用させる場合はスプレー式の消毒液等も用意します。腋下温が38.0℃以上に到達した人は、暑熱な環境での作業を回避させ、可能であれば、頭部や四肢に水をかけ、作業着や靴下を脱がせて休ませ、体温、心拍数、体重を測定させて作業開始前の状態に回復するまで風を送りながら水分を補給させます。

(3)作業位置

運動や作業をする場所は、日陰を選び、発熱体からなるべく離すように工夫します。時刻による太陽光の入射方向を想定して、建物等の影になるように午前中は西側で午後は東側を選びます。

(4)飲水

水分は作業前から確実に摂取するように促し、20~30分に150~250mLずつ飲ませます。発汗が多いときは、ナトリウム入りの飲料、ごま塩、塩の錠剤や飴、味噌、梅干、味付け昆布等の摂取を勧めます。発汗が多量のときは、消化管吸収を促すブドウ糖とナトリウムイオンの入った飲料を摂取させます。特に、ナトリウムイオンが入っていない飲料水の場合は、塩飴、梅干等を一緒に摂取させます。

(5)服装

服装は、化繊よりも羊毛を混ぜた素材が良く、いわゆる吸汗速乾の縫製で、赤外線を吸収しない白色系で、肌に密着しない通気性のあるものを選びます。安全上の問題がなければ血流の多い四肢の表面はなるべく露出させ、体表面と衣服の間に風が通る隙間を確保し、襟元を開放したクールビズ用の服装を許可します。屋外では日よけ付きの帽子、日傘、濡らしたタオル類を使用させます。温度差が大きいところを移動する場合には上着を持参させます。

(6)熱中症対策用品

保冷服、送気ファン付きの作業服、送気式の呼吸用保護具等の熱中症予防対策用品を使用させます。熱中症予防の保護具として、送風式の呼吸用保護具やヘルメット、風を通すヘルメット、ヘルメットに取り付ける保冷剤や日よけカバー、送風機付き作業服、額部や頚部に巻いて汗を吸い取る帯、保冷剤や相変化素材を利用した吸熱剤を入れたネックカラー・スカーフ・タオル・ベスト、水分蒸散式や冷水循環式の保冷服、圧縮空気を断熱膨張させて冷気を供給する方式の保冷服等の利用を検討します。

(7)作業負荷の軽減

暑い日や時間帯には、力やスピードを要す活動を減らし、何人かで分担して一人当たりの作業時間と作業量を短縮します。連続して作業が可能な時間を予想することは、温熱環境、活動強度、服装、個人要因が関係して実際には難しいことから、当日、個人の体調を観察し、暑さや疲労感を聴取しながら、現場で調整するのが現実的です。ただし、暑熱な作業を開始後の1週間程度は身体が暑熱順化していないので、休憩を取る回数を増やして、無理のない時間を設定します。