職場における 熱中症予防対策

3熱中症予防に係る行政指導

厚生労働省労働基準局は、局長通達として「職場における熱中症予防対策」(平成21年6月19日付け基発第0619001号)を示し、WBGT基準値を超えた場合は、さまざまな熱中症予防対策を講じるよう勧奨し、自力で水分の補給ができない場合は直ちに医療機関に搬送するよう指導しています(表16)。

表16 労働行政指針が示す熱中症予防対策(概要)
  1. 作業環境管理
    1. WBGT値の低減
      熱・直射日光・照り返しを遮る屋根、通風・冷房・除湿の設備の設置
    2. 休憩場所の整備
      日陰等の涼しい休憩場所の設置、氷・冷たいおしぼり等、飲料水の備え付け

  2. 作業管理
    1. 作業時間の短縮
      作業休止時間の確保、連続作業時間の短縮、身体強度が高い作業の回避、作業場所の変更
    2. 熱への順化
      熱への順化する期間(7日以上)の設定
    3. 水分及び塩分の摂取
      作業前後及び作業中の定期的摂取、摂取確認表の作成、巡視による確認
      20~30分ごとに0.1~0.2%の食塩水又はナトリウム40~80㎎/100mℓ(17~34mEq)のスポーツドリンクや経口補水液をカップ1~2杯程度の摂取
    4. 服装等
      吸熱性・保熱性のある服装の回避、透湿性・通気性の良い服装、身体冷却服、通気性の良い帽子の着用
    5. 作業中の巡視
      巡視による労働者の健康状態の確認

  3. 健康管理
    1. 健康診断結果に基づく対応
      定期健康診断結果に基づく医師等の意見に基づく就業上の措置
      熱中症に影響する疾患(糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全、精神・神経経患、広範囲の皮膚疾患等)のある労働者の高温多湿作業への就業の可否や留意事項に関する産業医・主治医等の意見聴取とそれに基づく措置
    2. 日常の健康管理
      睡眠不足、体調不良、前日の飲酒、朝食の未摂取の回避に関する日常生活指導
      熱中症に影響する疾患のある労働者に対する健康管理と事業者への申出の指導
    3. 労働者の健康状態の確認
      作業開始前・作業中の声かけ等による健康状態の確認
      次の場合は作業を中止:心拍数が数分間継続して180/分から年齢を引いた値を超える場合、作業強度のピーク1分後の心拍数が120超の場合、休憩中の体温が作業開始前の体温に戻らない場合、体重が作業前から1.5%超減少した場合、急激で激しい疲労感、悪心、めまい、意識喪失等の症状が発現した場合
    4. 身体状況の確認
      休憩中の体温・体重等の確認

  4. 労働衛生教育
    高温多湿作業の管理者及び労働者に対する教育(熱中症の症状、熱中症の予防方法、緊急時の救急処置、熱中症の事例)の実施

  5. 救急処置
    1. 緊急連絡網の作成及び周知
      病院・診療所の把握、緊急連絡網の作成・周知
    2. 救急処置
      熱中症を疑わせる症状の発症時の涼しい場所で身体の冷却、水分及び塩分の摂取等の実施、救急隊の要請と医師の受診