2熱中症予防に係る法令
労働法令は、暑熱な職場等では、2時間を超える時間外労働を禁止し、半月毎の作業環境測定(気温、湿度、黒球温)、冷房の設置又は通風の確保、塩及び飲料水の準備、半年毎の特定業務従事者健康診断の実施等を義務づけています(表15)。また、空調のある事務室では、気温17~28℃、湿度40~70%に維持する努力義務を課しています。また、熱中症予防通達)は、WBGT基準値を超えるおそれのある職場で行うべき作業環境管理(WBGT値の低減、休憩場所の整備)、作業管理(作業時間の短縮、暑熱順化の促進、水分及び塩分の摂取、服装の改善、作業中の巡視)、健康管理(健康診断結果に基づく対応、生活習慣の保健指導、作業を中止すべき生体指標、作業前の健康確認)、労働衛生教育、救急処置(水分付与、蒸散冷却)について具体的な事項を列挙しています。
表15 労働衛生関係法令が規定する高温環境の規定(一部省略)
- 労働衛生管理体制関係
多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務に500人以上が常時使用されている事業場では、専属の産業医を選任しなければならないこと(安衛則13条)
- 作業環境管理関係
- 暑熱又は多湿の屋内作業では、半月に一回、定期に温度、湿度、輻射熱を測定しなければならない(安衛法65条、安衛則587条、安衛則607条)
- 多量の熱を放散する溶融炉等では、熱気を直接屋外に排出し輻射熱から労働者を保護しなければならない(安衛則608条)
- 坑内の作業場では、半月に一回、定期に温度を測定し、気温を37℃以下としなければならない(安衛則589条、安衛則612条)
- 空調のある事務室では、2ヵ月ごとに1回、定期に室温、外気温、湿度を測定しなければならず、気温17~28℃、湿度40~70%になるように努めなければならない(事務所則5条)
- 作業管理関係
- 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務では、立ち入りの禁止、保護具の準備、休憩設備の設置(安衛則585条、593条、596条、614条等)
- 暑熱又は多湿の屋内作業場は、通風や冷房などで温湿度を調節しなければならない(安衛則606条)
- 加熱炉の修理では、適当に冷却後でなければ内部に立入らせてはならない(安衛則609条)
- 多量の発汗を伴う作業場では、塩及び飲料水を備えなければならない(安衛則617条)
- 健康管理関係
多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務では、半年に1回、特定業務従事者の健康診断を実施しなければならない(安衛則45条)
- 労働基準関係
- 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務における業務では、法定労働時間外に2時間を超えて就業させてはならない(労基則18条)
- 同業務に18歳未満の年少者及び妊産婦を就業させてはならない(年少則8条、女性則2条)
安衛法:労働安全衛生法
安衛則:労働安全衛生則
労基則:労働基準法施行規則
年少則:年少者労働基準規則
女性則:女性労働基準規則
事務所則:事務所衛生基準規則