人口動態統計によれば、熱中症による死亡者数は1995年~2014年の累計で10,412人に上り、20~60歳代では、身体活動が盛んな男性のほうが女性よりも多くなっています(図8)。高齢者のほうが発生率は高く(図9)、重症者である率も高くなっています(図10)。一方、乳幼児では親が自動車の後部座席で寝ているのを忘れる事件として発生し、児童・生徒・学生では野球・サッカー・ラグビー・バスケット・柔道・剣道等のクラブ活動やスポーツ競技で主に男性が犠牲になっています。
夏の平均気温が高い年には熱中症が増加する傾向があります。そして、熱波と言われた1994年に熱中症の社会的な認知が進み、死亡診断書にも状態名ではなく原因病名を記載するよう勧奨された時期とも重なって、この頃から熱中症という死因名が記載されることが多くなった傾向があります(図11)。
消防庁の統計によれば、熱中症として救急搬送者数は梅雨明け等で急に蒸し暑くなった日に急増する傾向がはっきりとしています。また、お盆休みや連休が明けた直後にも急増する傾向があります。これは暑熱環境に順化していない人が熱中症に理解していることを反映したものと考えられます。日本救急医学会Heatstroke STUDY2012によれば、20歳代~50歳代は仕事が原因の熱中症が最も多く、20歳未満ではスポーツによる熱中症が圧倒的に多くなっています(図12)。その中で運動種目として最も多いが野球となっています(図13)。
業務上疾病の統計によれば、労働災害としての熱中症により1997年~2015年の累計で386人が死亡していて、年間約20人に上っています(図14)。労働災害による死亡者はすべて男性です。業種別では、約6割が建設業ですが、就業人口の割合からみると屋外での業務が長い林業と警備業が多くなっています(図15)。熱中症が発生する時期は5月に第1例が報告され、ピークは8月よりも7月になることが多く、時間帯別では14~17時に約半数が集中しています(図16)。暑熱な現場での作業を開始後3日間で約半数を占めているのが特徴です(図17)。そして、例年、休業4日以上の災害は死亡災害の約15~20倍発生しています。都道府県別では、東京都が最も多く発生しています(図18)。ただし、軽症の熱中症は、職場における応急処置で回復する場合も多く、労働災害として報告されている事例はごく一部とみられます。
男女別
年代別